主任が辞める事を知った翌日、私は再び集中力を失い、くだらないミスを繰り返していた。

それを見兼ねた田中さんに誘われ、2人で飲みに行く事になった。

「麻友ちゃん、大丈夫、、じゃないよね?」

「はい、、大丈夫じゃないです」

「やっぱり主任の事、好きなんだね」

「え!?」

何で?どうして知ってるの?

「いや、見てればわかるよ」

田中さんが、苦笑しながら私の心の声に返事をする。

「それで、どうするつもりなの?」

「どうするって、、どうもしませんよ、今の私にできる事なんて、何もありせん」

「そんな事ないでしょ?」

「主任に好きになってもらうためには、とりあえず一人前にならなきゃって思ったから、今まで以上に仕事を頑張ろうって決めてたんです」

「でも、どう頑張っても主任が辞める前に一人前にはなれないし、それどころか動揺してミスしまくって、、私は本当に最悪な部下ですよ」

「麻友ちゃんの言いたい事はわからなくもないけど、それって、想いを伝えないまま、主任の事諦めるって意味だよね?」

「主任が今の麻友ちゃんを好きになる事だって十分あり得るのに、そんなの、絶対悔いが残るよ?」

「こんな半端な私を主任が好きになるなんて、あり得ませんよ」

「そんなのわかんないよ!わかんないから、主任に確かめるしかないじゃんか!」

田中さんが突然怒り出した。

こんな風に怒る田中さんは初めてで、戸惑ってしまう。

「ごめん」

困惑した様子の私に気付き、田中さんが謝ってきた。

「でも、何もしないまま諦めるなんて、そんなの駄目だよ」

「悔いが残れば、麻友ちゃんはきっとなかなか前に進めなくなる、現に今だって、混乱して訳わかんなくなってるんだろ?」

「麻友ちゃんが仕事を頑張ってたのは、主任の為だけじゃないはずだ」

田中さんの言う通りだ、私は私の為に仕事を頑張っていたはずなのに、主任の事で頭がいっぱいで、そんな単純な事がすっかり抜け落ちていた。

「想いを伝えて、その結果がどうなるのかは、正直わからない」

「でも、想いが通じればそれに越した事はないし、そうじゃなくても、何もしなかった時の後悔に比べれば、前に進みやすくなると思わない?」

何もしなかった時の後悔、、そんな先の事なんて、考える余裕すらなかった。

「麻友ちゃんが本気で主任の事が好きなら、会えなくなった時の喪失感は半端ないと思う」

「どんな選択をしても、麻友ちゃんはきっと、寂しくて辛い思いをする事になる」

「その辛さが少しでも軽くなるように、逃げずに、後悔の少ない選択をして欲しいんだ」