「で、なんでそう思うんだ?」
バレてしまったら仕方ない。
それに横田なら信頼できる。
今後のためにもちゃんと聞いておこう。
「2人を見てたらわかるの!あのね、わかりやすいから!
そうね、時期は今週の月曜日から。
まずはね、新山君の視線が優しい。
愛おしいものを愛でるように、古谷さんを見つめてるの。」
横田が自分の両手を胸の前で組み、うっとりとした視線で、何もない右斜め上を見る。
「そして、優しい。
新山君が部署のみんなにも優しくなってる。
ただし、古谷さんを狙う男性の動きには厳しいけどね。」

一気に横田がまくし立てる。
言葉もない。

「大丈夫よ。
まだ気付いてない人の方が多いと思うし。
私も喋らないから。
うーん、あとはもしかしたら橘さんも気付いてるかな。
でも、彼も大丈夫。
彼も無責任に、ぺらぺら喋る人じゃないから。」
横田の人物評は間違いないし、俺の橘評も変わらない。

「でも、今の2人の雰囲気だと噂になるのは時間の問題かなぁ、
洋子ちゃんも、漏れちゃってるからなぁ。
うふふふふ。
あー、可愛い。
洋子ちゃん、可愛いわよね。
うんうん。」
一方的に喋る横田を遮る術はない。

「あの子、私も狙ってたんだけどなぁ。
まさか、新山君と同じ趣味とはね。」
「おいおいおい。」
黙って聞いていたが、聞き捨てならない。
思わず、前のめりになる。

「私にとっては、新山君も古谷さんも大切なの。
大切な友人であり、大切な同僚よ。
古谷さんのこと本気なんでしょ?
新山君が軽い気持ちで女性と付き合うことはないって知ってるもの。
2人とも信用してるし、応援してるから。」

ほとんど横田が喋って、おれは頷くしかなかった。
横田にはかなわない。

横田の分のコーヒーを買い、手渡す。
「口止め料ってことね、ありがと」ニコニコしながら、横田が受け取る。

洋子への愛おしさが増したのは間違いない。
横田に礼を言い、ほぼ洋子の話をしながら二人でコーヒーを飲んだ。