聞いてみると、お互いの家は同じ代々木方面だとわかり、
部長の家の近くにあるという、おすすめのスペイン料理屋さんに行くことになった。
部長は自転車。私は徒歩。
家に自転車を置いてから向かいたいと言うので、一度部長のマンションに寄ることになった。
自転車を押す部長と並んで歩く。
「今日は何回も言いますけど、ほんと不思議な感じがします。」
「うん、俺も。
こうして洋子さんと話せるなんて嬉しいよ。」
「はい。私も雲の上の存在の部長とこんなにお話しできて嬉しいです。」
「雲の上??」
「そうですよ。
部長とこんなに近くでお話しようものなら、会社の女性陣に、特にファンクラブの方になんと言われるか。
今日は特別な日です。」
真面目な顔で返すと、困った顔をされてしまった。
でも、本当の話。
会社で今日の一連の出来事を話したら、周りに質問攻めにされて大変なことになってしまう。
「今日のことは、部長と私の秘密ですから。」
「わかった、秘密か。
それはいいけど、さっきから呼び方が部長になってるのは変えてもらえる?」
部長が急に立ち止まるので、私も立ち止まって部長を見上げる。
「すみません。やっぱり慣れなくて。」
「ちゃんと呼んで欲しい。」
「え、でも。」
「呼んでくれないと、動かない。」
本当に部長が自転車と共に立ち止まってしまった。
「えーーー、何言い出すんですか??
動いてください!歩きましょ!」
慌てて振り返り、部長の所に戻る。
「やだ。」
「駄々こねないでください!」
「やだ。」
部長の腕を引っ張るが、頑として動いてくれない。
その様子がおかしくておかしくて、笑いながら「賢二さん!」と呼ぶと、
「うん」と歩き出してくれた。
「賢二さんはもう子どもじゃないんですから。
賢二さんは思ってたよりわがままなんですね。
そんな賢二さん、はじめて見ましたよ。」
こちらも意地になって「賢二さん」を連呼してみた。
思いのほか、部長が嬉しそうで、私も嬉しくなる。
2人で向かい合って、腕に触れたまま、声を出して笑った。
いやぁ、酔ってないのに、なんだか酔ってるみたい。
部長の家の近くにあるという、おすすめのスペイン料理屋さんに行くことになった。
部長は自転車。私は徒歩。
家に自転車を置いてから向かいたいと言うので、一度部長のマンションに寄ることになった。
自転車を押す部長と並んで歩く。
「今日は何回も言いますけど、ほんと不思議な感じがします。」
「うん、俺も。
こうして洋子さんと話せるなんて嬉しいよ。」
「はい。私も雲の上の存在の部長とこんなにお話しできて嬉しいです。」
「雲の上??」
「そうですよ。
部長とこんなに近くでお話しようものなら、会社の女性陣に、特にファンクラブの方になんと言われるか。
今日は特別な日です。」
真面目な顔で返すと、困った顔をされてしまった。
でも、本当の話。
会社で今日の一連の出来事を話したら、周りに質問攻めにされて大変なことになってしまう。
「今日のことは、部長と私の秘密ですから。」
「わかった、秘密か。
それはいいけど、さっきから呼び方が部長になってるのは変えてもらえる?」
部長が急に立ち止まるので、私も立ち止まって部長を見上げる。
「すみません。やっぱり慣れなくて。」
「ちゃんと呼んで欲しい。」
「え、でも。」
「呼んでくれないと、動かない。」
本当に部長が自転車と共に立ち止まってしまった。
「えーーー、何言い出すんですか??
動いてください!歩きましょ!」
慌てて振り返り、部長の所に戻る。
「やだ。」
「駄々こねないでください!」
「やだ。」
部長の腕を引っ張るが、頑として動いてくれない。
その様子がおかしくておかしくて、笑いながら「賢二さん!」と呼ぶと、
「うん」と歩き出してくれた。
「賢二さんはもう子どもじゃないんですから。
賢二さんは思ってたよりわがままなんですね。
そんな賢二さん、はじめて見ましたよ。」
こちらも意地になって「賢二さん」を連呼してみた。
思いのほか、部長が嬉しそうで、私も嬉しくなる。
2人で向かい合って、腕に触れたまま、声を出して笑った。
いやぁ、酔ってないのに、なんだか酔ってるみたい。
