嘘でしょ、、?
なんで………私が、、?

ホワイトボードに貼られた一枚のプリント
、今年のミュージカルの配役表。

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ロミオ役 紫月 唯有
ジュリエット役 天笠 波瑠

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私、天笠波瑠は県内でトップレベルの吹奏楽部の部員だ。
うちの部は、毎年定期演奏会で目玉のミュージカルをやるの
誰にも言えないけど、実はミュージカルのキャストをやってみたくて、この高校を選んだんだっ!
でも、、
実際の私はそこまで目立つわけでもなく、キャストに選ばれることなんてない、、って諦めてた

のだけど、、
なんでこうなるのっ?!?!

何度目を擦ろうと変わるわけのない文字の羅列

キャストにすら選ばれないはずの私がなぜ、しかもよりによって主役になんて、、っ!

「え、主役、天笠なのっ?!」
「沙奈だと思ってた」
周りの人たちのざわめきが聞こえる

私だってびっくりだよ
主役は沙奈、って思ってたのに

「波瑠っ!おめでとう〜〜!すごいじゃんっ!」

ざわめきの中、一際明るい声が響く
振り向くと満面の笑みの香里奈と明日香がいた

「ありがとう香里奈、、
だけど、、」

複雑そうな表情の私を見てか、今度は明日香が
「大丈夫だよっ!波瑠は可愛いし、絶対ドレスも似合うよ」
と励ましてくれる

そうだよね、嘆いていたって仕方ない、決まったものは決まったことだし、、

心配する香里奈たちを安心させるためにも
「ありがとう!少しだけ自信が湧いてきた」
小さくこぶを作ってガッツポーズをする

「はぁ、、どうしよう、可愛すぎる、、、」

「ただでさえかわいいのに、主演をするとなったら、波瑠に言い寄る男どもが増えちゃうな」

「定期演奏会、男子禁制にする?」

物騒な話をはじめる2人をあわてて止めに入る。

「心配してくれてありがとうっ
でも、最近は男性恐怖症も治ってきてるし、、
だから大丈夫だよっ!」

まさか主役になるとは思わなかったけど、
念願のキャストになれたんだ
うだうだ言わずに、精一杯頑張らないと、、!





「あま、、がさ、、?」

後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえて振り向くと、配役表を見つめ、呆然と戸惑った顔を浮かべた紫月唯有がいた

私が見ていることに気づくと、彼は笑みを浮かべ、
「よろしく、天笠」
と明るく言う

彼の少し色素の薄い透き通った栗色の髪の毛が窓から吹き込む風でさらさら揺れる

やっぱりイケメンだな〜、
先ほどの戸惑いを感じさせないほどの爽やかスマイル、、

っ…いけないいけない
見惚れてる場合じゃなかった、

「よ、よろしくね、紫月くんっ」
少し上擦った声で返すと
紫月くんはふっ、と笑って
「うん!あ、そういえば、、天笠は______ 」
何かを言いかける

うん?どうしたんだろう?
私に何か聞きたいことがあるみたいだけど、、
そんなに言いにくいことなのかな?

"_____どうしたの?"
と聞こうとしたそのとき、

「紫月ーーー?どこにいるーーー?」
上の階で先輩が紫月くんを呼ぶ声が聞こえてきた

「あ、呼ばれてる。
ごめん、行ってくるね、」

「う、うん、」

、、なんだったんだろう、?


………それよりもっ、、!
恥ずかしい、、
紫月くんに情けない姿を見られちゃった、、
なんでよりによって今声が上擦るのよっ、!
あーもうっ!!

……というかなんで私、こんなことを気にしてるの?!
紫月くんは好きになってはいけない人なんだから、、!



ーーー紫月くん、
彼はうちの部活きってのハイスペック男子。
容姿端麗なのはもちろんのこと、勉強もできて、運動もできて、歌もフルートもうまくて、誰にでも優しくて、、
おまけにどんな仕事を任されようと、完璧にこなしちゃうのっ!
だからそんな紫月くんに惚れちゃう女の子はたくさんいる。
ライバルは多し。
これが紫月くんを好きになっては行けない理由一つ目。

もう一つの理由は、、

ううん、そんなことどうでもいいのっ
私は紫月くんのことを好きになんかならないんだから。

ーーーーこれが、自分自身を縛る強力な呪いになることも知らずに、、