「ねぇ。ちょっと?聞こえてるんでしょ?」

俺は聞き流しながらひたすら歩き続けた。

関わりたくない。

「自己紹介の時もぼそぼそ言ってたから何言ってるか分かんなかったし。」

関わりたくない。

「フタバ君。であってる?」

止めてくれ。

いつまでついてくる気なんだ?

俺は足を止めて振り替える。

「うわっ!」
「ちょっ!」

俺の歩く速さが速かったから彼女は止まれ切れずに、俺の胸に鼻をぶつけた。

「鼻、痛っ…。」

「もう止めてくれ。俺に関わらないでくれよ。」

彼女と目が合った。だけど直ぐに反らした。

「あはは。やっと声聞けた。」

俺の眉間に自然とシワがよる。

「もう、俺に関わらないで欲しいんだけど。」

「そんなに嫌がらないでよ。あたし別に怪しい者じゃ無いんだし。」

一限目の始まりを告げるベルがなった。

「あ、授業始まるね。まぁこの話は放課後にゆっくりしよ。」

彼女はそう言って教室に向かって走っていく。

「だから、嫌だって…。」
彼女は振り返ってにっこり笑顔を見せながら、

「言っとくけど!逃げようなんて考えないでね。」

それから彼女は意外というほど大人しかった。

何もしてこないから逆にそれが余計に気になる。

だけど気づくと彼女は近すぎず遠すぎずの距離にいて。

そんな彼女を見る度に、

「勘弁してくれよ…。」

と、思う。それこそ彼女の企みにまんまとハマってしまったみたいだ。