水から解放された俺は肺一杯に空気を吸い込んだ。
咳き込む俺。
それを見て笑う天音。
「そんなに笑うなよ。仕方無いだろ…泳げないんだから。」
「ふふっごめん。あ、口から血が出てるよ。」
掌で口を拭う、
「いてっ。」
うっすらと血が着いた。唇が切れてるみたいだ。
あぁあの時か。とすぐに思い出す。その後の事も。
「アタシ、水の中でキスしたの初めて。」
「アレは…キス…って言うかその…。」
「ぷっ…。はははっ!」
「今度は何だよ。何が可笑しいんだよ?」
「だってさぁ〜あんなになってたのにアタシのリュックはしっかり背負ってるんだもん〜!」
天音に言われてまだリュックを背負ってる自分に気が付いた。
水中ではこのリュックのせいで重心が後ろに傾いて立てなかったに違いない。それで足が着かない!とパニックになったんだ。
そんな自分がマヌケに思えて思わず吹き出してしまった。
「ははっ。俺ってバカだ。くくっははっ!」
それからしばらく俺達は顔を見合わせて腹の底から思いっきり笑った。

