「天音ってさ、何をしてても楽しそうだよな。」
天音は笑う。
「何言ってんの?楽しいから楽しそうなんだよ。フタバは楽しく無いの?」
楽しく無い。だけど不満があるわけでも無い。
いつも思っていた。
何で笑っているんだ?
何がおかしいんだ?
何が楽しいんだ?
そういえば、天音も最初笑っていた。
「俺は、楽しいって事を忘れた…のかもしれない。」
「じゃあさ、忘れモノを一緒に見つけに行こうよ。ちゃんと見つけるって約束するから。」天音は立ち上がって俺に手を差しのべた。「ほら?行こっ!」
その手の向こうの天音の顔は太陽が眩しくて見えなかったけど、きっと笑ってるに違いない。
「あぁ、約束だ。」
少しためらったけど俺はその手を掴んだ。
少し軽くなった天音のリュック。
おかげで足取りもさっきより軽い。
さっきの少し拓けた場所からしばらく歩いたところで天音が「この音、滝かなぁ?」と嬉しそうに言っていた。
歩く毎にごぉー。という音も大きくなっている。滝の音なんだろう。
普段は蛇口から出てくる水の音とまったりと流れる川の音しか聞いたことが無いから、この音にはうっすらと恐怖心をあおられる。

