「そう言って貰えると嬉しいな。アタシも思ってたよりずっと良かった。こう思えるのってさフタバと来たからだと思う。」
そう言って優しく笑う天音の横顔は普段の何倍も綺麗に見えた。
そんなふうに思う自分が恥ずかしい。
俺…もしかして天音の事が…。
天音に対して抱き始めている想いに驚きを感じた。
「俺は…」
ぐぐぅぅぅー…。
「あ…。」
「あ…。」
俺のお腹が鳴っていないということは天音のお腹が鳴ったということになる。
しばらく沈黙。
天音はぱちんと一回だけ拍手して口を開いた。
「そろそろお昼にしない?お腹空いちゃった!」
苦笑いする天音。
「俺も天音と同じタイミングでお腹鳴った。食べようか。」
俺は嘘をついた。
「なんだ〜フタバも鳴ったんだ〜!アタシだけかと思ったよー。」
天音はリュックからあの重箱とペットボトルを取り出してさっさと並べて水を紙コップに注いだ。それから手を合わせて、
「頂きまーす。」
実に手際が良い。
またお腹が鳴る前に食べ物を胃に入れたいんだろう。
いつの間にか割り箸を握っているし、空いてる手はおにぎりを掴もうとしている。
俺はくすりと天音に気づかれない様に笑ってから、「頂きます。」をした。

