クローバー

「噛むなよ。全く…何考えてるんだ!?」

と怒ったものの天音の無邪気な笑顔には俺の怒りを消し去る力があるみたいだ。

それから俺達は他愛のない会話をしながら過ごした。会話と言っても、ほとんど天音が一方的に喋っていたのだけれど。

バスが止まり俺達は別々に料金を払って降りた。

『森林公園前駅』

バスの20分間はやけに短く感じた。

ここまで乗り物に乗っていただけだけど、それなりに疲労感がある。ただ、座っているだけなのも結構ツラいみたいだ。

「これから公園まで15分歩くのかー。」

「天音がここって行ったんだろ?嫌になったの?」

「嫌じゃないけどぉー。」

「じゃあどうしたんだよ?」

「おんぶしてっ!」

「無理だ。」

「抱っこは?」

「それも無理。」

天音は目力というやつで精一杯訴えかけてきたけど、無言の俺を見て直ぐに諦めた。

「じゃあ…ヒッチハイクは…?」

「車…通ってるか?」

さっきのバス意外、車通りは全く無い。

「分かったよぉ。真面目に歩きますよーっ!」

天音はそう言った後軽くため息をついてから、ずんずん前を歩いて行った。