クローバー

それからすぐにやって来たバスに乗り込んだ。

乗客は一人もいないんだろうなと思っていたのだが、俺たち以外にエコバックを持ったおばさん、杖つきのおじいさん、スーツを着たおじさん、が乗っていた。

一番後ろの席が空いていたので俺たちは迷わずそこを選んで座った。

「これから20分。何にもしないのは退屈だよね〜。」

天音はそう言いながらあのリュックの中を探ってお菓子の袋を取り出して、封を開けると小袋を2つ出して俺にくれた。

「はい。初心者はまず2つね。」

そう言うと天音は3つの小袋を開けて、それぞれ色が違うビー玉位の大きさの飴を全部口の中に入れてしまった。

「な…。」

「ろぉ?しゅごいれしょ?」

と、天音は頬を膨らませながらウインクしてきた。

「何言ってるか分かんないよ。」

すると突然、ガリッ!ボリッ!ガリガリッ!!となんとも歯切れの悪い音を発しながら飴を噛み砕き始めた。

その音が苦手な俺は、

「だからって噛まなくて良いから!」

と耳を塞いだが遅かった。飴を飲み込んでから天音が、

「もう噛んじゃったもん。」


と少し笑う。