僕は姉さんの言いたい事が半分は分かったけどもう半分は分からなかった。それでも僕は姉さんが難しい顔をしてるのを見て、これ以上姉さんを困らせたらダメだ。と思い、
「うん。分かった。」
そう言って立ち上がった。姉さんもいつもの顔に戻り僕達は少し急ぎ足で家に向かった。
会社を出て、横を行き交う車を横目で見ながら、早足で歩く姉さんに引っ張られるように。
そんなふうに歩いていたら足がもつれた。いつもなら姉さんが握ってる手で引っ張って支えてくれるけど、今日は僕の手がするりと離れてしまった。
姉さんが振り向き、僕と目が合った瞬間に転んでしまった。
倒れる瞬間、勝手に目が閉じた。
驚き。
固い地面の衝撃。
そして、痛み。
さらに、
「双葉っ!」
「双葉君っ!」
2人の叫ぶ声。
姉さんと…あの女の人。
なんで…?僕の名前…。
「フタバッ!」
体を揺さぶられたせいか?
耳元で名前を呼ばれたせいか?
さっきまで見ていた夢のせいか?
俺は電車の中で「うわっ!」と叫んでしまった。
何人かの乗客が俺の事を見たが口が開いたままの俺と目が合うとすぐに視線をそらした。
「大丈夫?」
天音が少し引き気味にではあるけど心配して声をかけてくれた。

