父さんの会社は駅からだいたい10分くらい歩いた所にあった。

周りに建っている他のビルより大きく感じた。

入り口の前までくると今度は僕の手に自然と力が入り姉さんの手をぎゅっと握った。

「まずは受付…。」

姉さんは呟きながら歩き出す。

会社の中に入るとすぐ正面に姉さんが言ってた受付があって、綺麗な女の人が僕達を見て何か気づいたような顔をしたかと思うと駆け寄って来てしゃがんでニコリと笑った。

「あなた達、お父さんのおつかいで来たのね?」

女の人は優しい声で言った。

僕はその声を聞いて安心した。

「そうです。コレを持って来るように、父に言われて。」

姉さんは落ち着いた口調で言うと僕の手を離し、ポケットから小さな何かを取り出して女の人に見せた。

すると女の人はまたニコリと笑い、

「偉いわね。お父さんはとても助かるわ。」

緊張が解けた僕は辺りをキョロキョロ見回していた。そんな僕にも女の人は「君も偉いわね。」と頭を軽く撫でてくれた。

「じゃあそれをお父さんに渡して来るわね。すぐ戻って来るからあそこに座って待っててくれるかな?」

女の人はそう言ってソファの方を指差した。