それから、俺達は電車に揺れられていた。

駅にたどり着いてから電車に乗り込むまで、何人かの視線が天音のリュックに釘付けになっていた。

見る人が見れば家出でもしてきたんじゃないかと勘違いされそうだ。

3年前の雑誌によると、目的の森林公園まではこれから1時間電車に乗って終点まで行き、次はバスで20分、その後は徒歩15分となかなかの内容になっている。

意外としっかりした遠足になりそうだ。

隣では重たい荷物から解放されたせいか天音が早くも静かな寝息をたてていた。

重たい荷物…。

ふ、と昔を思い出す。

まだ、父さんがいたときだ。

その日、朝から家の空気は重たかった。

父さんと母さんが知らない女の人の事でもめていた。

父さんは大事な会議があるからと母さんを振り切る様に仕事に行った。

そしたら母さんが深くため息をついて、朝ごはんを食べている僕と姉さんの所にやって来て、

「ごめんね。」

と言い肩をぎゅっと抱いた。

程なくして母さんは町内の集まりに出かけた。帰りにスーパーに寄ってくるから少し遅くなると言っていた。