いや、進められなかった。
「おい。」
この声と共に、歩き始めた途端に目の前に壁ができたから。
真正面ではネクタイしか見えなくて、少し顔を上に上げるとやっと顔が見えた。
緩く締められたネクタイに銀色の髪、そして…
目が合った瞬間、一瞬目を奪われたが、すぐに目を逸らした。
そうでもしないと吸い込まれそうな真っ直ぐな目をしていたから。
目を逸らした瞬間になんとか平常心を取り戻し、冷静なフリをして目の前に立つ人を見上げた。
「なんですか。」
ゆっくりを口を開いた彼の表情は、驚くほど無表情だった。
「俺らのこと知っててあんなこと言ったのか。」
