少し表情を緩めた男は、そう言いながら私の横に座った。
口角が上がったところを見たら、不覚にも見惚れてしまい……慌てて前に向き直した。
まあこの人を知ったところでどうもならない気もするんだけど。
「……紫月だ。」
「え?」
「名前。お前は?」
「あ…す、い。翠です。って、…えぇ!?」
彼の名前を理解するまで、かなりの時間がかかった。
しづき、シヅキ……、うん。やっぱり紫月様の、紫月だよね。
「青蘭の紫月様、ですか…?」
「はは、さっきまでタメ口だったろ。」
「そりゃ紫月様って知らなかったし…。」
「タメ口でいいよ、同い年だし?」
私のネクタイを見ながらそう言った。
うちの高校はネクタイの色で学年がわかるようになっている。
3年は赤、2年が緑、1年が青。
私の緑のネクタイをみて判断したようだけど、まさか紫月様も2年生だったとは…。
