「施設内はもちろんだけど、その遊歩道にも幽霊さんが居るんだろ?」

「そうですね、遊歩道の途中には池もあるし、やっぱり水辺付近には集まりやすいみたいです。 あとは……楽しげな声に惹かれて寄ってくる人も居ます」

「あー、やっぱり交ざりたくなるのかな? 修学旅行の写真に写り込むとかよく聞くもんな」



この肝試しの時に、何人かは「幽霊を見た」って言ってたな。

かく言う俺も、耳元で囁く声を聞いた。

全員が競歩状態で歩いてる時にだから、耳元に顔を寄せて喋りかけてくる奴なんて居ない。

居るわけがない。

だからアレは幽霊さんの声だった。 絶対にそうだ。 と、今でも強く強く思っている。


……あぁ、いいなぁ。

またあの場所に行きたくなってきた。


だけど、当然のごとく部外者は宿泊施設の敷地内には入れない。

遊歩道のところも外からの侵入がないようにフェンスで囲ってあったはずだ。

サイトで取り上げたいくらいの優良な宿泊施設だけど、学校行事とか子ども会の集まりとか、そういう団体での宿泊しか受け付けていないんだよなぁ……。

ほんっとうに、残念だ。



「何事もなく、無事に終わればいいですね」



と、神代が苦笑気味に言う。

……確かにそうだ。

俺自身が行くのなら、幽霊さんたくさん来てくれーって懇願するけど、諏訪ちゃんと倉本の二人が行く時は……何も起こって欲しくない。

ただ楽しく合宿を終えて、良い思い出を作ってくれたら嬉しいな。



「とりあえず諏訪ちゃんには、「お守りを忘れずに持って行ってね」って言っておこう。 で、倉本にはー……「はしゃぎすぎるな」って言っとけばいいか」

「そうですね」



一年生の行事に、俺たち上級生は手出しが出来ない。

ただ遠くから見守ることしか出来ないから……無事に戻ってくることをひたすらに願う。

それだけだ。