「……そういえば、オリエンテーション合宿で泊まる施設のこと…芽衣子さんや倉本に もっと詳しく言っといた方がいいと思いますか?」

「ん? あぁ幽霊さんのこと? それは俺もちょっと考えてたんだけど、詳細は言わなくていいんじゃないかな。 いろんな情報を持ってると ついつい目で追いたくなっちゃうから、危険が増しそうな気がするんだよね。 だから「確実に居る」っていう情報だけで十分だと思う」

「あぁ…うん、確かにそうですね。 倉本は喜んで探しそうだけど、芽衣子さんは色々知っちゃってると逆にキツいだろうな……」


「とは言っても、多分どっかからは情報が入るだろうね。 同じ学校に兄姉が居る奴は施設の噂を知ってるし、そもそもレクリエーションで「夜の散策」が組まれてるだろうから」



合宿では毎年 夕食のあとに「夜の散策」が実施される。

「夜の散策」と書いて、ルビは「肝試し」。

宿泊施設の裏にある遊歩道を、二班合同でぐるっと一周して帰ってくるというものだ。

確か、十分から十五分くらいは歩くはず。


で、それが済んだ班から入浴になり、そのあとにそのまま自由時間、そして就寝。 という流れだった気がする。

肝試しに出発する順番は、夕食時に班の代表がくじ引きをしていた。

神代の時も同じようにくじ引きだったと聞いたから、多分今年も同じだと思う。


最初に行く班の方が入浴が早くなるから、その分 自由時間も長くなる。

最初に出発した班と最後に出発した班を比べると、三十分くらいは違いが出てたように思う。

だからみんな早い順番を望んでたし、自由時間のためにすっげー急いで回ったっけ。


走るのは禁止されてたから、肝試しっていうよりは強歩大会みたいな感じだった。

日中はウォークラリーで、夜は強歩大会…って、どんだけ疲れる行事なんだよ。 っていうのは今でもよく覚えてる。

ま、それはそれで良い思い出だけどね。