それをパラパラと捲りながら、静かに言葉を放つ。
「つーか毎回思うけど、俺が言ったことをノートに書き出して文章を練ってくって大変じゃない? で、チェックが済んだあとはそれをそのままキーボードで打ち込んでいくし……。 ぶっちゃけ、最初からキーボードで打ち込んでいく方が楽な気がするんだが」
「んー、俺はそこまで大変だとは思ってないですよ。 それに、ノートに書いていく方が訂正もしやすいですから」
「それならいいけど……あんまり無茶はするなよ?」
「はい、大丈夫です。 ということで、チェックお願いします」
このノートには過去に行った場所の話も記されている。
情報を共有してるのは俺と神代の二人だけで、読むのもこの家の中でだけ。
門外不出の代物というやつだ。
……訂正しやすいから、と言いながらも、訂正の跡なんてほとんど無いんだよなぁ。
多分、頭の中で色々考えて、考えて、考え抜いたあとに記しているんだ。
俺だったらその過程でゴッチャゴチャになっちゃうと思うけど、神代の書くものはいつだってきちんとまとまっているし、結末がどうなってるか知っている俺ですら無条件に引き込まれる。
まったく……凄い才能だよ、本当に。
「──……うん、今回も読み応えバッチリだし、とくに気になる点はない。 このまま記事の編集画面に書き写しでオッケーだよ」
「よかった、じゃあ今から仕上げちゃいますね」
「うん、よろしく。 その間に俺は写真のチェックしとくよ」
「了解です」
それぞれが持ち帰ったノートパソコンを開き、俺は写真のチェック、神代は文章の書き写しを始めて行く。
お互いに黙々と作業をし、静かな時間が続いていくけれど……何分か経った時に、神代が話しかけてきた。



