ハァ……と深く息を吐いた神代は、背もたれに体を預けながら天井を見つめた。
「まぁ、先輩の気持ちはわからなくもないですよ。 芽衣子さんが同好会に馴染んでくれるのは、やっぱり嬉しいですし」
「……うん。 体質のことで色々苦労してきただろうから、俺らの前でくらいは もっと気楽に過ごして欲しいなって思う。 と言いつつ、去年のお前に比べたら諏訪ちゃんはもうだいぶ素で喋ってくれてるよなー」
「あー……俺は警戒しまくりでしたからね。 桜井先輩が心霊系のこと大好きなんだなっていうのは すぐわかりましたけど、だからって俺の体質を受け入れてくれるかはわからなかったし。 今はもう素で喋りまくってますけどね」
「だな」
とお互いに笑うけど、実際のところ、神代との距離に まだ壁を感じることはある。
出会った頃よりも壁は薄くなったし、低くなったとも思うけど……それでも壁自体が消えたわけじゃない。
まぁでも、それはお互い様っちゃお互い様か。
誰だって大なり小なり自分のテリトリーってものがあるから、無断で侵入されたら嫌に決まっている。
俺だって、踏み込んで欲しくないこともあるしな。
神代が俺に見せてくれた部分を大事にしていけばいい。
きっとそれで十分だ。
「……っし、じゃあサイトのことやってくか。 頼んでた原稿はどうなった?」
「もう出来てますよ。 というか、元々その話をするために引き止めたので」
「そっかそっか。 相変わらず仕事が早いなぁー」
「先輩が遅いだけでしょ」
と会話をしながら、神代からキャンパスノートを受け取る。



