「桜井先輩っ。 卒業しても仲良しのままで居てくださいねっ」
「ん? そりゃもちろん。 ていうかまだ四月だよ? 今年度始まったばっかりだよ? 卒業なんてほぼ一年後じゃん」
「一年なんてあっという間ですからっ。 それまでの間、みんなでいっぱい楽しんでいきましょうっ」
……今はまだ、遠すぎる先のことは考えないでおこう。
一緒に過ごしてる今この時を大事にしていく。
それでいい。
それが一番だ。
「……ったく、そんなの当たり前だろ」
そう言った桜井先輩が、私の髪をクシャクシャっとして……目を細めながら、とても柔らかな笑みを浮かべた。
「俺は超絶 仲良くなった奴とは一生の付き合いをしていくって決めてるから、たとえ諏訪ちゃんが嫌がっても もう一生離さねぇよ?」
「うわぁ……束縛男だ……」
「なんで嫌そうな顔すんだよっ。 むしろそこは「プロポーズされたっ!?」って喜ぶところじゃない?」
「……プロポーズはもっとオシャレな場所が良いし、ダイヤの指輪も欲しいです」
「ったく、可愛げがねぇなー」
なんて言いながらも、桜井先輩はケラケラと笑っている。
そのあと、私の髪を撫でてた手が郁也先輩のところへと移った。
そして今度は、郁也先輩の髪もクシャクシャっとし始めた。
「神代とも、一生の付き合いをしていくつもりだからな?」
「……わープロポーズされたー、嬉しいー」
「あからさまな棒読みすんなよっ」
と言いながら、桜井先輩は相変わらず楽しそうに笑っている。
それを見ながら、私と郁也先輩もクスクスと笑い合う。
と、そうこうしてるうちに、あっという間に家に到着した。
「……っし、じゃあ今日の楽しい楽しい交流はここまでだな。 諏訪ちゃん、また明日な」
「はい、また明日っ」
ひらひらと手を振る二人に、私も手を振り返す。
今日もまた笑顔で一日を終えることが出来た。
それがたまらなく嬉しくて……幸せで。
そんな幸せな日常をしっかりと噛み締めながら、私は笑顔のまま家へと入った。



