「あの動画を撮った彼、SNSのアカウントを削除したみたいだよ」

「え? あぁ……そうなんですね」

「廃屋に無許可で侵入してたっぽいし、それ以前の投稿に飲酒をほのめかすような書き込みもあったとかなかったとか。 まぁそんなこんなで、最近は個人を特定しようって動きが加速してたんだ」


「なるほど。 それで慌てて逃げた、と」

「そういうこと。 だけどもう特定されてるんじゃないかな。 俺はこれ以上 彼らのことも動画に映った幽霊さんのことも追いかけるつもりはないけど、暇な人はしばらく色々と嗅ぎ回って情報を拡散していくと思う」



梨乃先輩が言ってた、デジタルタトゥーってやつだ。

何ヶ月か経てば騒ぎも収まってくるだろうけど、それでも完全に消えるわけではない。

近所の人の耳に入れば あっという間に噂は広がり、その地で暮らし続けるのは難しくなるかもしれない。

学校内で広まってしまった場合も、かなりしんどい状況が続くと思う。



「……ま、自業自得ですね。 なんならそのまま地獄にまで落ちていって欲しいくらいです」

「アハハ、過激だなぁ。 だけど、そういうドス黒い気持ちは抑えてね? ほら、生霊って無意識に飛んでくことが多いらしいし。 ていうか どうせなら俺に生霊飛ばしてよ、諏訪ちゃんの生霊に取り憑かれてゾクゾクしたいから」

「……相変わらずの変態ですね。 でも、確かに…あんまり負の感情を募らせるのはよくないような気がするので、「ざまぁみろ」って思うだけにしときます」



アイツらの身元が特定されたとしても、私には関係ない。

関係のないところで、炎上でもなんでも勝手にしてればいい。

今の生活が(おびや)かされることがなければ、それでいい。