「あ、桜井先輩もう来てる」
「ほんとですね。 おーい、桜井せんぱーい」
ロータリー前のベンチに腰かけながらスマホを見てた桜井先輩が、私の声に反応して顔を上げる。
目と目が合うと、先輩はすぐに笑顔を見せた。
「おはよーさん。 てか二人とも、メッチャ眠そうな顔してるなぁー」
「ワクワクしすぎて全然 眠れませんでしたっ」
「アハハ、テンションは高めだね。 実は俺もねー、超楽しみで七時間しか眠れなかったよ」
「普通に寝てるじゃないですかっ」
と話しながら、お互いにふふっと笑う。
このゆるーい感じが、やっぱり好きだなぁ。
「先輩、樫村先輩は?」
「家の人に車で送ってもらったらしくて、俺よりも先に来てたよ。 で、今は駅の隣のコンビニで買い物中」
「そうなんだ。 じゃあ俺もちょっと行ってきていいですか? 小腹が空いた時用に何か買ってきます」
「うん。 でももうすぐ電車来るし、急げよー?」
「はい」
駅の隣にあるコンビニに向かう郁也先輩の背中を見つつ、桜井先輩の隣に腰かける。
「諏訪ちゃん、朝ご飯はしっかり食べてきた?」
「はい、大丈夫です。 桜井先輩は?」
「俺も大丈夫、エナジードリンク飲んできたから」
「え、それって朝ご飯って言えます?」
「大丈夫大丈夫、朝ご飯って言い張ればなんでも朝ご飯になるんだから」
……よくわからないけど、それでいい…のかなぁ……?
「向こうに着いたら、ちゃんと色々食べてくださいね? ちょうど桜まつりで出店もいっぱい出てるみたいだし」
「わかってるって。 あ、そういえば……ちょっと話したいことがあったんだ」
ふと、桜井先輩が私から視線を外し、どこか遠くを見た。