上の学年に物申すっていうのは、なかなか難しい部分もあると思う。
以前の人間関係を断ち切るためにこの地にやって来たというのなら、尚更に。
だけど、俺や樫村、そして神代の前でだったら自由になっていい。
自由になってもらいたいんだ。
「まぁでも、昨日出会って今日全部 変えろって言われても無理だろうから、徐々にやって行こう。 俺たちはまだ諏訪ちゃんのことを知らないし、諏訪ちゃんも俺たちのことを知らない状態だしね。 一緒に色々な活動をしていって、少しずつお互いをわかり合っていく。 今日がその第一歩っ。 ということでいいんじゃないかな?」
「……はい。 ありがとうございます」
「もー、ほら、スマイルスマイルっ。 せっかく週末に行く場所が決まったんだからさー、楽しいことを想像しながらニッコニコで過そうぜっ?」
「ふふっ…そうですね」
諏訪ちゃんの顔が、少しだけ和らぐ。
俺に対しては まだまだ気を使う場面も多いだろうけど、それでも今 笑ってくれたことが何よりも嬉しい。
一歩ずつ、ゆっくり前へと進んでいこう。
「綺麗な景色を見て、美味しい物を食べて、みんなでいっぱい笑ってさ。 楽しく過ごして、良い思い出にしような」
諏訪ちゃんの頭に手を置き、髪を優しく撫でる。
……というのをしたあとに、ハッと気づく。
何の気なしに触ってしまったけど、実は嫌な気持ちにさせちゃってるかも……!?
「ごめん、うっかり撫でてたっ。 ていうか ほぼほぼ無意識で触ってたっ。 もしかして気色悪くて固まってた!? メッチャごめんっ!!」
そう言いながら、慌てて手を離す。
そんな俺に、今度は諏訪ちゃんが慌てた顔をした。



