桐生は、桜井先輩の腕に空いてる側の手を絡ませて抱きつくような形だ。
彼氏である透が見てるけど、それよりも何よりも恐怖の方が勝ってるみたい。
「……俺が一緒の班だったらよかったのに……」
とポツリと言った透を俺と蒼葉で慰めつつ、三人を見送る。
三人は何かを話しながら歩いてるみたいだけど、トンネルの真ん中辺りまで進んだら、もうその声は聞こえなくなった。
いや、正確には「なんとなく声らしいものは聞こえる」けど「よくわからない」という状態だ。
そして更に奥まで行ったら、その「声らしいもの」も とうとう聞こえなくなった。
時々カメラのフラッシュの明かりが見えるから、写真を撮ってるんだということはわかる。
だけど、わかるのはそれだけだ。
「……ていうか、思ってた以上に時間がかかっててヤバいね……」
と、住吉が声を漏らす。
トンネルの長さは四百メートル弱。
片道 三、四分くらい…だろうか?
いや、写真を撮りながら進めばもっと時間がかかるかも。
更には向こうの出口からこっちに戻ってくるまでにも同じくらいの時間がかかるってことだから……確かにヤバい。
「うわーどうしよ、次は私たちだよね? メッチャ緊張してきた。 龍泉寺くん倉本くん、私が真ん中でもいい? あと、手…繋いでも平気?」
普段はそこまで怖がる様子を見せない住吉も、今はやっぱり怖いらしい。
そして同じ班になった透と蒼葉は、二人ともすぐオーケーを出した。
「もちろんだよ。 三人で協力して頑張ろう」
と微笑む透。
……透は幽霊に取り憑かれたことがあるから、やっぱりこういうところに入るのは怖いだろうな。
でも住吉を安心させるために微笑むところはさすがだ。
「俺も全然オッケー。 むしろこっちからお願いしたいくらいだし。 先輩たちは「軽めのところ」って言ってたけどさー……雰囲気がヤバすぎるよね」
と言う蒼葉は、トンネルの方を見ながら小さく息を吐いた。
さすがの蒼葉も今は少し恐怖を感じてるらしい。
ていうか、それが普通だよなぁ……。



