……桜井先輩の声を受け、なんとか顔を上げる。
その桜井先輩はとても真剣な顔で私を見ていて、横に居る梨乃先輩は凄く心配そうな顔だ。
そして郁也先輩は、あまり表情を変えていない。
感情が読み取れない…けど、幽霊が見える郁也先輩なら気づいてるはずだ。
幽霊と思われるモノは映っていない、って。
……言おう。
ちゃんと、言わなくちゃ。
「……ごめんなさい、幽霊は…見えてないです」
「え、そうなの?」
「あの……撮ってる側の人を見て、驚いちゃって……。 その三人、元クラスメートです……」
中学三年生の時のクラスメート。
彼らは いわゆるムードメーカーというやつで、女子からの人気も高かった。
でも私は……大嫌い。
コイツらのことは ほんっとうに無理。
顔を見るだけで…ううん声を聞くだけでも身震いがする。
「……私、卒業式の前日に、ここに映ってる人たちに…その……体を触られて……。 でも服の上からだけなんで、大丈夫です。 それ以上はなかったです。 ほんと、それだけなんです。 でもやっぱり、顔を見たら……ちょっと思い出してしまって……」
私が卒業後に県外に行くことは みんな知っていた。
だから多分……私に何かしても周りにバレにくいって考えたんだと思う。
元々、学校内では孤立してたしね……。
翌日には卒業式だったし、問題を起こさずに卒業したい。 っていう私の気持ちも利用されたんだと思う。
そして私は彼らの思惑通り、誰にも何も言うことなく卒業式の日を迎えた。
……あの三人は、卒業式の日も多くの友達に囲まれながら笑っていた。
いつも通りに。
何事もなかったかのように。
ただただ明るく、楽しそうに。



