「俺は全然構わないけど、諏訪さんは?」
「……おばあちゃんは条件をクリアするまで絶対に認めてくれないと思うんで、仕方ないですね……。 えっと、郁也先輩。 迷惑かけてごめんなさい。 改めてよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、芽衣子さん。 さてと。 じゃあ恵美子さん、これで入会は確定ってことでいいですね?」
と先輩が聞くと、おばあちゃんは満足そうな顔で頷いた。
「うん、合格っ。 学校でも ちゃんと名前呼びを続けるのよー?」
「はいはい、了解です。 じゃあ話もまとまったところで、俺はそろそろ帰りますね」
「ちょっとちょっと、どうせ帰っても一人でしょ? せっかく来たんだからウチでご飯食べてったら? 今日は生姜焼きよ?」
「あー……メッチャそそられる。 けど、今日はやることがあるんで帰ります。 すみません、また誘ってください」
「もうー、子供が遠慮することないのに。 今度誘った時は食べにいらっしゃいね? コンビニ弁当ばっかりはダメよ?」
「はい。 ありがとうございます」
神代先輩…じゃなくて郁也先輩は、おばあちゃんにペコリと頭を下げてから私を見た。
とても優しく、穏やかに。
「じゃあ芽衣子さん、また明日」
「あ…はいっ、色々お話をしてくれて ありがとうございましたっ」
「いえいえ」
お互いに頭を下げ、笑い合う。
──その後、玄関まで郁也先輩を見送り……今日はそこでお別れとなった。
「芽衣子、入会のことは私に任せて大丈夫だからね。 ていうか事後報告にしちゃいましょっ。 入会が済んじゃえばこっちのものだものっ」
……と言う おばあちゃんの悪ーい顔に苦笑いを浮かべながらも、実際は安堵していた。
だって、これから先は先輩たちと一緒に活動していけるから。
想像していた「普通の高校生活」とはちょっと違うけど、それでも私は、これからのことが楽しみで楽しみで仕方がなかった。