「それで? 何があったの? 健吾くんに何か酷いことを言われたの?」
「……違うんです。 私、先輩と喋ってるうちに昨日のことを思い出して……。 本当に馬鹿なことをしちゃったな、って、凄く後悔して……」
「あぁそれって、幽霊を自分に引きつけようとした…って話? 智樹に聞いたけど、確かにそれは良くないことだったと思う。 友達を助けようとしたのは勇敢なことだけど、それで自分の身が滅んだら意味がないもの」
「……はい」
「……私ね、智樹が無茶をしないか いつも心配なの。 あの人は「大丈夫」って笑うけど、でも死んじゃったらもう二度と会えないでしょう? 智樹が居ない世界で生きていくなんて私には耐えられない。 たとえ私を助けるために無茶をしたんだとしても、私は私のために無茶なんかして欲しくない。 私のことを想うのなら自分を生かすことだけ考えて。 って、そう思うのよ」
凛とした声が部屋に響く。
紗良さんの思いは、とても真っ直ぐだ。
「私は智樹が生きていればいいの。 その結果 私の命が散ることになっても、智樹さえ生きていればそれは本望だわ」
「紗良さん……」
「って智樹に伝えたことがあるんだけど、「俺も全く同じ気持ちだよ」って笑われちゃった。 ふふっ、おかしいでしょう? 二人とも同じ考えだったの。 大好きな相手を助けるためになら、自分の命は全然惜しくないのよ」
「……え……?」
そっと静かにタオルを外して、紗良さんを見る。
紗良さんはとても優しく笑っていて、私の髪をそっと撫でた。



