「先輩、もうそっちの話は終わったんですか?」
「あぁ、ひとまずは…な。 まったく勘弁して欲しいよ……なんなんだあの豹変ぶりは……」
「謎めいた人物ジェイドは、その界隈ではかなり人気があるみたいですからね。 これからもファンのために頑張ってください」
「……神代だってジェイドじゃん」
「俺はただ先輩の指示通りに文章を書いてるだけですから」
ニッコリと笑った郁也先輩は、立ち上がったあとすぐドアの方に向かって歩き出した。
だから私も立ち上がって、先輩のあとを追う…つもりだったんだけれど、
「諏訪ちゃんはこっち。 俺と来て」
「……へっ?」
「先輩たちの相手は神代に任すっ。 デザートまでには戻るからあとよろしくなっ」
「えっ、ちょ、先輩っ……!?」
有無を言わさずに手を引っ張られ、そのまま階段を上って二階の一部屋へ……。
その部屋には簡易ベッドが一つと、作業用だろうテーブルとイスが一脚。
ベッドの上には先輩が通学に使ってるカバンが置いてある。
「ここは俺が泊まる時に使わせてもらってる部屋なんだ。 と言っても大体は下のソファーで寝落ちしちゃうんだけど。 あ、急に引っ張ってきちゃってごめんな。 手、痛くなってない?」
「あ、それは全然 大丈夫ですっ。 もちろん、ビックリはしましたけどね」
「うわー……ごめん。 なんか俺、諏訪ちゃんのことビックリさせてばっかりだね。 ていうかいつもそうかも? ごめんなぁ……」
「ふふっ、大丈夫ですよ。 私、イスに座りますね」
「うん」
部屋に入って、イスに腰かける。
先輩は部屋のドアを開いたままにして、自分はベッドにゴロンと横になった。
「密室で二人きり」という状況にならないようにと気遣ってくれたみたい。
「はぁー、疲れた。 まさか紗良先輩があんな人だったとはなぁ……」
「ほんと、ビックリしました。 あぁでも、紗良さんが先輩を無視したり睨んだりしてた理由がわかったのはよかったですよね」
「あ、それは確かにそうだな」
「そのあとの……先輩のオーラの話…って、先輩自身はどう思いました?」



