「ねぇ君、もしかして この同好会に興味ある?」

「……えっ……?」



ふと、隣に男の人が立ってることに気がつく。

整った顔立ちのその人は、微笑みを浮かべながら私を見ていた。



「すっごく真剣に見てるから、興味があるのかなぁと思って」

「……えっと……」

「あ、突然 声かけちゃってごめんね。 俺は三年の桜井(さくらい) 健吾(けんご)。 この同好会の会長をやってるんだ」


「……そう、なんですね……」

「もし興味があるのなら、ウチの同好会に入らない?」



穏やかで、落ち着いた雰囲気の人……。

握手を求められ、うっかり手を重ねてしまいそうになるけれど……ギリギリで踏み止まる。



「……ごめんなさい。 他の部活とか、色々見て回りたいので」

「まぁまぁ、そう言わずに。 はい、握手握手っ。 これで仲間入りっ」

「え、ちょっと……あのっ……?」



さっきまでの落ち着いた雰囲気は、いったいどこへ……。

私の手を掴んだ男の人は、ニコニコ笑顔のまま有無を言わさずに歩き出した。


………

……




西棟三階。

ここへ来るまでの間で なんとか断りたかったけど、その願いは叶わず……とうとう私は空き教室に足を踏み入れてしまった。



「心霊現象 研究同好会に ようこそっ」



……元気いっぱいな桜井先輩の声に、教室内に居た一人の女子生徒が即座に反応する。

椅子に座ってたその人は、パァッと明るい笑顔を見せたかと思ったら、駆け足で近くにやって来た。



「念 願 の 女 の 子 っ。 来てくれてありがとぉーっ!!」



ガシッと私の両手を掴み、目をウルウルさせながら笑っている。

……無理矢理 連れて来られたんです、とは言いにくい雰囲気になってしまった。