「……なんか、ごめんね。 せっかくの休憩時間なのに……」
「いいって、気にすんな。 あ、正面玄関のとこ行くか。 今はスタッフさんたちも休憩時間でさ、さっきまで俺、正面玄関のところで智樹さんと二人で喋ってたんだ」
「そうだったんだね。 智樹さん、まだ居るかな……」
「居る居る、余裕で居る。 つーかほら、カレー作りをする炊事場に行く時、正面玄関で靴を履き替えて行くだろ? そのまま玄関から左の方に行くのが正解のルートなんだけど、間違って逆方向に行く生徒が居ないようにって誘導するのが次の仕事なんだって」
「そっか、それなら絶対に居るね」
智樹さんと話せるなら、話しといた方がいいよね……。
むしろ、智樹さんなら部屋で感じたあの視線の主のことを知ってるかも?
「そういやさっき話してて知ったんだけど、あの人ってうちの学校のOBらしいよ」
と、如月くんが言う。
OB……卒業生だったんだ。
「当時 合宿で利用した施設がバイトを募集してたから、懐かしくなって応募したんだって。 で、ここからがビックリなんだけどさ……」
如月くんは周りをキョロキョロと見たあと、ボリュームを落として話し始めた。
「……智樹さんが合宿した当時は、プレイホールの女性の幽霊は居なかったらしいよ」
「えっ…そうなの……?」
「うん。 だからごくごく最近…一年か二年くらいの間で来たんじゃないか、って言ってた」
……一、二年。
本当にごくごく最近だ。
生霊…とは違うと思うから、まだ亡くなってからそんなに時間が経っていないんと思う。
でも、どうして……、
「……なんであの人は、プレイホールに居るんだろう」
「あ、それは智樹さんも不思議がってたよ。 普通の人じゃ入れない施設なのになんで居るんだろう? って」
「うん……」



