初めて部屋に入った時には感じなかったし、さっき女の子たちと喋ってる時にもとくには感じなかった。
だけど今はメチャクチャ感じてるんだよね……。
その視線に対して、怖いとは思わない。
だけども とにかく気持ち悪い。
ねっとりとした視線の主は、きっと私の服の中をも覗いて見てる。
下着を…それから、一糸まとわぬ姿を。
上下左右、あらゆる角度から覗いてるはずだ。
幽霊が見えるという体質の私だからこそ、それをヒシヒシと感じている。
「……もう、行こうかな」
独り言を、まるで幽霊に聞かせるかのように言う。
その後、握りしめていたスマホをカバンに戻してからゆっくりと立ち上がった。
大丈夫。
ただ普通に廊下に出ればいい。
廊下に出てしまえば、ねっとりとした視線の主も 私を見るのはやめるはずだ。
他の女子が被害に遭うかもだけど……そうなったら本当にごめんなさい。
でも私はもう無理。 絶対に無理。
気持ち悪さに、耐えられない……。
「──……ハァ……」
ドアを開けて出るその瞬間まで、ねっとりとした視線が私の全身を捉えていた。
けれども、廊下に出た瞬間……その視線はふっと切れた。
あの視線の主は、部屋の中に留まってるのかな?
それとも私が気づいていないだけで、誰か別の女子を見つめ始めた?
……まぁ、どっちでもいい。
今は視線が切れたことを喜ぼう。
あと十五分くらい休憩時間が残ってるから、本当はまだスマホを使っていたかったけど……仕方ない。
早く移動してはダメというルールはないから、もう野外炊事場に行ってもいいよね。
というか、穂乃果ちゃんたちと合流しようかな?
まだ自習室に居ればいいんだけど……ひとまずは、一階に行けばいいか。



