そんな思いが暴走したとは思わないが、借り人競争で今時あるのかというくらいベタな「好きな人」というお題が出たので(ベタすぎて思わず二度見した)、もうめんどくさいしこの機会にバラした。

しかも俺の目の前で咲玖を借りようとする男がいるくらいなので、もうなりふり構っていられない。
外野がうるさいけど、結構スッキリした。


「見せつけてくれるわねー」


そう茶化すのは何故かメガネをかけた春日井。その隣で大志がニコニコと笑っている。


「さっちゃんを奪って走り去る姿、カッコよかったなぁ」
「大志も1位おめでとう」
「ちょっと私は無視?」
「春日井って目悪かったっけ?」
「視力2.0よ」


何となく察してよくやるな、と思った。


「ところであんたの許嫁、放心してるけど」
「ああ」


さっきからずっとこの状態なんだよね。
何も言わずに勝手にバラしたこと、今になって申し訳なくなる。


「ごめん、咲玖。勝手にバラして。嫌だった?」
「あ、違うの。蒼永の足の速さについていけた自分に驚いてて、でも疲れたから脱力してただけ」

「この子やっぱり大丈夫かしら?」
「まあさっちゃんだから…」

「びっくりしたけど、嫌ではなかったよ」
「ほんとに?」
「うん、これからは堂々と一緒にいられるね」