咲玖は俺がモテるって言うけど、自分もモテている自覚はない。
常に男たちが色めき立った視線を咲玖に向けているのに、全くの無自覚だ。

…それがどんなに俺の肝を冷やしているか、咲玖は1ミリも気づいてない。

まず言っておくと、咲玖を誰にも渡すつもりなんかないし、一度俺のところに来たら誰かに目移りする咲玖ではないと断言できる。
だけど、咲玖を好きなのは俺だけでいいし、他の誰の目にも映って欲しくない。

無茶苦茶言ってる自覚はあるけど、心からそう思う。


「白凪さん、今日はツインテだ!めっちゃかわい〜」
「マジで付き合いて〜」
「お前じゃ無理だろ」


……そうだよ、お前じゃ無理だ。
咲玖は俺のものなんだから。

ここ最近、家の事情で咲玖と一緒に過ごす時間がなく、まともに会話すらできていないせいでイライラしている。

咲玖に話しかけたくても、


「九竜くん!ちょっといい?そのリストバンドなんだけど…」


何故か知らない女子に話しかけられ、全然咲玖の元に行けない。
今日だけで数人リストバンドがどうとか言ってくる。

女子たちを巻いて巻いて、ようやく咲玖と二人きりになれた。
俺は咲玖のことを大事にしたいと本心から思っているけど、理性と本能は相反するもので、一度咲玖に触れるだけで心が揺らぐ。

めちゃくちゃに愛でてしまいたくなる。
咲玖のことをもっと独占したくなる。
それもこれも、咲玖がかわいすぎるから。

そんな風に思ってるなんて、咲玖にはまだ知られたくはないけど――…