「あの時、指輪の代わりに花で作った指輪をはめたの覚えてる?」
「覚えてる!スタッフさんが気を利かしてくれて、余ったお花をくれたんだよね」
「そう。でも、その後に花嫁と花婿が本物の指輪交換してるの見て、俺はちょっとショックだった」
「なんで?」
「所詮ごっこ遊びなんだなって」


まあ子どもだったしねぇ。
むしろかわいいことしてたなぁって思っちゃうけどな、私は。


「いつか咲玖にも本物の指輪をはめて欲しいと思った。留学する前、離れてる間に咲玖を誰かに取られたくなくて、指輪を贈ろうとしたけど…それは意味ないなって。
咲玖自身が俺を選んでくれないと意味がない」

「…蒼永…」

「だから戻って来て、気持ち伝えて、咲玖が振り向いてくれたら…渡そうと思ってた」


目の前に差し出された小箱から溢れ出る輝きに、思わず両手で口を押さえる。
蒼永はそっと私の左手を取り、薬指にその指輪をはめてくれた。

自然と涙が溢れ出る。


「咲玖、俺と結婚してください。ずっと一緒にいて欲しい」

「…っ、はい…!」


蒼永は優しく微笑み、ぎゅっと抱きしめてくれた。

これは家族は関係ない、蒼永と私だけの約束だ。
本当の意味で私たちは許嫁になれた。

すごく幸せで嬉しいのに、愛しさが溢れる度に涙も止まらない。
でも、指輪はもっとよく見たい…!
蒼永の背中に回していた手に視線をやり――、


「ちょっと待って!!」
「え?」
「これ、高いんじゃないの!?」
「そうでもないよ…てか今それ気にすること?」
「いや絶対高いでしょ!!」


何だかんだで蒼永は良いとこのお坊っちゃんだから、正直金銭感覚はあまり当てにならない!

そんなムードのないことを気にしてしまうあたり、私はまだまだだなぁと後で思い返すのでした。