「俺の彼女に何か用?」


強い力でグイッと引き寄せられ、あっという間に蒼永の胸の中に収められた。


「あーー…、いや何も…」


彼氏持ちだとわかると、その人はそそくさと逃げて行った。
助かった…!!


「ごめん、咲玖…」
「ごめんなさい〜!!」
「え、なんで謝るの?」
「私がしっかりしてないから…!上手く断れなかったし…」
「俺も一人にしてごめん。大丈夫だった?」
「うん…」


ダメだなぁ、私…。
紫帆ちゃんの時はあんな風に声出たのに、今日はパニクってしまった。

でも、彼女って嬉しかったなぁ…。


「咲玖、他に行きたいところある?」
「えっ?」
「特にないなら、俺の行きたいところに行ってもいい?」
「! もちろん…!」


蒼永の行きたいところ!?すごく気になる…!
自分からリクエストしない蒼永の行きたいところってどこだろう?
ワクワクしながらついて行った。


「あれ、ここって…」
「覚えてる?」
「覚えてるよ!」


保育園の時にうちのママと永美里さんの共通の友人の結婚式を行った教会。
まだ幼かった私たちも連れて来てもらい、待ち時間にチャペルを見学させてもらったところだ。


「ここで結婚式ごっこしたんだよね!」


永美里さんに二人もいつか結婚式を挙げるのよ、と言われて結婚式のキラキラに当てられた私は、今すぐやりたい!と言い出した。
それでごっこ遊びをしたんだよね。

…今思うとあの時の私、何もわかってなかったなぁ。