控えめだけど俺の背中に手を回し、きゅっと抱きしめ返す咲玖。


「蒼永が好き…っ」

「咲玖…」


抱きしめていた咲玖を少し離し、指で咲玖の涙を拭った。潤んだ瞳で俺を見つめる咲玖がかわいい。
桜色に染まった頬にそっと触れると――、


「待って!」
「え…何?」


このタイミングで……?


「あのっ、私は蒼永に恋してるから!」
「…!」
「そうゆう意味での好きだよ…?」
「うん、わかってる」


再び咲玖の頬に触れた。


「っ、まって…」
「もう待たない」


ずっと待ってた。
その二文字がずっと欲しかった。

花のような笑顔も怒った顔も泣きじゃくる顔も、全部がかわいくて愛おしい。
咲玖が隣にいてくれるだけで良かった気持ちが、どんどん欲張りになって膨らんでいく。

ずっと、咲玖の(すき)が欲しかった。


「――やっと俺のものになった」

「え?…っ」


咲玖の小さな唇を塞いだ。
一瞬強張ったように反応したけど、すぐに俺のキスを受け入れる。
やばい、かわいすぎる……。

名残惜しいけど、いきなりがっつきすぎるのもなと思って、唇を離した。


「…ふっ、真っ赤」
「し、仕方ないじゃんっ!」


あーー…、ほんとにかわいい。
もう一回キスしたい。


「もう心臓こわれそう…なのに、うれしい…」
「…、もう一回していい?」
「えっ!?」


もっと大事にしたいのに、すぐに歯止めが効かなくなる。
それもこれも咲玖がかわいすぎるから。

恋人となったかわいい許嫁に、もう一度キスを落とした。