そういえば、紫帆ちゃんもそんなこと言ってた…。


「で、でも、紫帆ちゃんは友達だって…」
「許嫁の前で気がある素振り見せるわけないでしょう!?」
「そ、それもそうだよね…」
「今は違うにしても、昔は好きだったとかは普通にあり得る話だと思うけど」


そ、そうなのか……。
てか調理部の先輩も似たような話してたな…なんで私ってばその可能性に至らなかったんだろう…。


「えっ、てかもし紫帆ちゃんが蒼永のこと好きだったら、私って相当邪魔?」
「そうなるわね」
「そんなぁ!!」
「ま、そう考えると恋敵と友達になるメリットないし、そのセンは薄いか」
「そうだよね…!!」
「とはいえ、頭の片隅には入れておいた方がいいわよ。
もう一度言うけど、九竜はめちゃくちゃモテるの。松川茜みたいに狙ってる女子はごまんといるんだから、早いとこ付き合っちゃいなさい」


ううっ…。
いやでもそうだよね…。蒼永がモテるのは流石の私もわかってる。

今になって理解してる。
私たちは「許嫁」だけど、「恋人」じゃないんだ。


「私蒼永に告白する!」
「おーそうよ、その意気」


その時、スマホが鳴った。画面に表示された名前を見て、私の心臓が飛び跳ねる。


「蒼永からだ!!」
「あらいいタイミングじゃない」
「どうしよう…!!」
「普通に出たら?」


好きって自覚してからの電話、めちゃくちゃ緊張するんですけど…!!


「も、もしもし…っ」
「あ、咲玖?今大丈夫?」
「うっうん…どうしたの…?」
「ごめん、実はしばらく一緒に帰れなくなった」
「えっ」