心底呆れ顔の桃ちゃん。
でも、今の私はこのアイシャドウパレットでどんなメイクをしようか考える方が楽しいのだ。


「そういえばさっちゃん、蒼永くん帰って来るんだってね」
「そう!そうなの!」


こちらはもう一人の親友で桃ちゃんの彼氏・黄瀬(きせ)大志(たいし)くん。
こう見えて料理が得意な家庭的イケメン。


「5年ぶり?楽しみだね」
「うんっ」


実は蒼永とは幼馴染なんだけど、ここ5年は会ってないの。
九竜家の跡取りは強くなるための留学をするのが慣わしらしく、今は九州にいる。中学はずっと寮生活だった。
高校も九州の高校を受けるのかと思ってたら、こっちに戻って来るらしく久々の再会になる。


「色々あって入学が1ヶ月遅れたけど、やっと会えるから楽しみ!」
「5年間1回も会ってないんだっけ?」
「うん、なんか武者修行も兼ねてるから強くなるまで帰って来ちゃダメなんだって」
「九竜の家ってすごいけど変よね……」
「おじいさまが厳しいからねー」


しょっちゅう連絡はしてたけど、顔を合わせるのは本当に久しぶりだ。


「今日帰って来るから久々に家族みんなでディナーするんだ〜。だから新しいアイシャドウでメイクするの!」
「あら、いいじゃない。綺麗になって九竜を驚かすのね?」
「いや別に?外食だから、早速メイク試せる良い機会だなと思って」
「あんたってほんと……」
「あはは、さっちゃんらしいね」