勝利の瞬間は訪れた。
不意の小手が決まり、蒼永の一本が高らかに宣言される。

やった、勝った…!!


「勝ったぁ!!」
「すごい!!」
「流石ね」


本当にすごい!!
あんなに強い相手に勝っちゃうなんて…!!
めちゃくちゃカッコよかったよ…!!

1年生なのに一番強いブロックで優勝しちゃった!!


「やったあ!おめでとう蒼永!!」


私の叫びが届いたのか、防具を脱いだ蒼永とバッチリ目が合う。
そして、口パクで何かを伝えた。

「キ」「ス」「ね」


「……っ!!」


そ、そうだった……。

興奮してて忘れてた…っ!!

途端にみるみる赤くなる私の顔。
ど、どうしよう…本気かな…本気だよね……。
蒼永だもんね……。

耐えられなくて思わず目を背けてしまったけど、絶対気づいてるよね〜…。


「〜〜っ…」


…なんかもう、再会してから蒼永にドキドキさせられっぱなしだな…。

私は何となく気づいていた。
もう幼馴染でも、祖父に決められた許嫁同士でもない、違う関係性に向かっていること。

でも、どうしていいかわからなくて、気持ちに蓋をしてしまっていること。
そのことに気づかないフリをしてることに。