「本当に蒼永がそう言ったんですか?」
「な…っ、あなたに何がわかるのよ!」
「わかりますよ、ずっと一緒にいるから。蒼永は自分が特別だとか思ってないし、人と比べたりもしないです。
あなたこそ蒼永の何を知ってるんですか?」
「なっ、生意気な…!」


松川の手が振り落とされようとしたところで、その腕を掴んだ。


「蒼永!」
「九竜くん…!」

「俺の許嫁に手出すなら許さないよ」
「え……っ」


咲玖が「何言ってんの!?」みたいな顔してる気がするけど、気にしない。


「俺からしたらあんたのが迷惑。もう話しかけてこないで」
「……っ」
「行こう、咲玖」


俺は咲玖の手を引いてその場を立ち去った。
頬を真っ赤にして唇を噛む松川。
これでおとなしくしてくれたらいいけど。

その帰り道。


「さっきの子クラスメイトじゃないの?あんなこと言ってよかったの?」
「心配するとこそこなの?」
「だって、蒼永がちっとも友達作る気ないから…」
「友達になりたい奴がいないだけだよ。心配しなくても、なりたい奴がいたら友達になるよ」

多分だけど。今のところ一人もいないけど。

「ほんと?蒼永、昔から私以外の人と喋りたがらないんだもん。私は蒼永の良さを周りの人にも知ってもらえたら嬉しいよ」
「俺は咲玖だけが知っていればいいよ」


さっきみたいに。咲玖だけが理解してくれるなら、それでいい。