「……それはそれで別の意味で心配だけど」
「何?」
「いや、なんでもない。なるべく帰りが一緒になるならいいよ」
「ちょっと過保護すぎる気もするけど」
「そんなことないよ」


蒼永はさりげなくスーパーの袋を持ってくれた。


「あっ」
「持つよ」
「大丈夫だよ!」
「いいから」


うーん、やっぱり甘やかされすぎじゃない?
昔から蒼永は私に甘いっていうか、優しすぎるところはあったけど、5年離れてる間に加速してるような…。


「ありがとう」
「ん」


でも、こうして私のことを思ってくれているのが嬉しい。
蒼永の隣は安心できて、ちょっとドキドキする。

……ん?ドキドキってなんだ?

思わず自問自答してしまった。
今までドキドキしたことってあったっけ?


「どうかした?」
「ううん」


多分このドキドキは。
再会したばかりの蒼永に慣れてないだけだと思う。
多分まだ知らない蒼永が存在するんだと思う。


「咲玖、何か作ろうとしてた?」
「えっと、マフィン。この前大志くんに教えてもらったから、作れるかなって思って」
「へぇ、おいしそうだね」
「蒼永はマフィン好き?」
「咲玖が作ってくれるなら好き」


ほんとに私のこと甘やかしすぎじゃないかな…。


「じゃあ、作ってみるねっ」
「うん」


その夜、マフィン作りに挑戦したけど、お世辞にもおいしいとは言えない出来だったのに、蒼永は食べてくれた。
悔しかったけど嬉しくて、調理部に入ってみようかな、なんて思ったりした。