ハッとすると、私は大学生から引き離され、蒼永の腕の中にいた。
蒼永は見たこともない形相で睨み、相手の腕を掴み上げている。


「いって…っ」
「――失せろ」
「…っ、クッソ!」


大学生は掴まれた腕を押さえながら逃げていった。

よかった、助かった…っ。


「咲玖!大丈夫!?」
「蒼永…っ」
「早めに帰ってきて良かった…変なことされてない?」
「うん……っ」


怖かったのと安心したのとで、涙腺が壊れてしまった。


「こわかったぁ…っ」
「咲玖…」


ぎゅっと抱きしめられた瞬間、安心感に包まれた。
それと同時に、懐かしさを思い出す。
そうだ、蒼永は私が困ってる時いつも一番に駆け付けてくれた。

今もそうだ、若干汗が滲んでいるのは走って来てくれたから。


「ありがとう…っ」
「もう大丈夫だから」
「うん…」
「……やっぱり部活やめようかな」
「えっ!?」
「だって、部活に行ってたら咲玖のこと守れない…」
「ダメだよ!部活で頑張らないと退学になっちゃうんだから!」
「普通科に入り直す」
「おじいさまに怒られるから!」


蒼永はむうっと不満そうにしている。
突拍子もないことを言い出すから涙が引っ込んでしまった。
しかも結構本気でやめそうなのがやばい…!


「じゃあ、私が部活に入るよ!」
「え?」
「私も部活に入ったら帰りが一緒になるかもしれないし!」
「…空手部か剣道部に入るの?」
「いやそれは…何か他の部活に…」


武道どころか運動全般苦手だから、何か文化部で良いものがあれば…。