桃ちゃんに言われて、ハッとした。

そうだ、蒼永はずっと前から…
再会するずっと前から、好きでいてくれてた…。

まだ恋を知らなかった私のことを。


「…私、自信がなかったせいで…蒼永のこと拒むようなことしちゃった。
絶対傷つけた…っ」


蒼永はいつも、どんな私でも受け止めてくれていたのに…っ。
こんなに好きなのに――…


「…私も悪かったわ。焚き付けるようなことしちゃって」

「なんで?桃ちゃんは悪くないよ…!」

「でも、咲玖たちには咲玖たちのペースがあるんだものね」

「桃ちゃん…」

「あのね咲玖。今はまだこわいとか恥ずかしいって気持ちが勝つと思うけど、いつかそんなこと考えられないくらい…好きな人ともっと近づきたい、触れ合いたいって思う日がくるわ」


桃ちゃんの目は真剣ですごく優しくて、私はじっと見つめた。


「だからそれまでは、無理に先に進まなくてもいいの。
素直に思ってること話したら、九竜だってわかってくれるわよ」

「そう、かなぁ…」

「そうよ、死ぬほど咲玖を溺愛してるんだから。九竜の溺愛っぷりは私の方が見てるのよ」


桃ちゃんは悪戯っぽく笑うと、ポンと私の背中を押した。


「そろそろ滑り降りてくる頃じゃない?ほら、仲直りしてきなさい」
「桃ちゃん…」
「15時に出口集合ね。私は大志待ってるから」
「うん…!行ってくる…!」


桃ちゃんに見送られ、私は覚束ない足でスキーを滑らす。

ごめんね、蒼永。
ちゃんと謝って、私の気持ちを素直に伝えるから――…

大好きだって、ちゃんと伝えるからね。