名前を呼ばれて、ドキドキして振り返った。
顔を見た瞬間、泣きそうになった。


「蒼永…!」
「迎えに来た」
「なんでわかったの…?」
「大志からね」


どうやら大志くんが連絡してくれてたみたい。
うわあん、ありがとう大志くん…っ!


「あの白凪さん、この人って…」
「あ、私の」

「ええっ!?もしかして九竜くん!?」


そう叫んだのは、小学校も同じだった女の子だ。
そっか、蒼永は小4まではこっちにいたから知ってる子もいるんだ。


「九竜くんだよね!?」
「そうだけど」
「えっ、九竜ってあの?」
「マジで?」


男子も女子もざわざわし出す。
蒼永色んな意味で目立ってたもんなぁ…。


「あたしのこと覚えてる?小4の時同クラだったんだけど!」
「……ああ、うん」


…この反応、絶対覚えてないな。


「キャー嬉しい!びっくりしたよー!まさかこんなにイケメンになってるなんて!!」
「ねぇ九竜くんも一緒にカラオケ行かない?」

「行かない」


そう言うと、蒼永は私の肩を抱き寄せる。


「許嫁のこと迎えに来ただけだから」

「――えっ」

「じゃあ、そういうことで」


肩を抱き寄せられたまま、私は蒼永に連れて行かれる。
背後から色んな人の「えぇーーー!?!?」という叫び声が聞こえた。

振り返る余裕はなかった。