「そういえば蒼永って特待生なんだよね?」
「一応そうらしい」
「じゃあSクラスで確定なのか」


武道の名門・九竜家の息子で中学時代は空手と剣道で全国優勝した蒼永は、学校側からスカウトを受けるくらいだったりする。
うちの学校には特待生制度があって、勉強以外にも一芸に秀でていれば学費全額免除+特待に関わることの支援は学校側が全部してくれるという、破格の制度がある。

その代わり特待生の要件は厳しいし、結果を出さないと即退学というかなりシビアなものなんだけどね。
そんな特待生だけで集められるのがS組なのだ。


「S組ってどんな人がいるんだろ?楽しみだね」
「俺は咲玖と一緒が良かったんだけど」
「いいじゃない。同じ学校には通えるんだし」


ずっと離れてたんだから、こうして一緒に登校出来るだけでも私は嬉しい。

……あれ、なんかさっきからものすごく見られてる?


「あの黒髪の人、誰?めちゃくちゃイケメンなんだけど!」
「ほんとだ…芸能人じゃないよね!?」


違う、見られてるのは蒼永だ。
こんな風に騒がれるくらいイケメンなのか…。
カッコよくなったなぁとは思ってたけど、こうして他者評価を聞くとなんか…不思議な気持ちかも。


「白凪さんと一緒にいる奴誰だ!?彼氏か?」
「白凪さん、彼氏いたのか…」
「狙ってたのに…三つ編み姿もかわいいな…」

「……、ねぇいつもこんな感じなの?」
「え?ああ、今日は蒼永がいるからだよ。やっぱり他人から見てもイケメンなんだね」
「そうじゃなくて」
「え?」
「……やっぱり帰って来て正解だった」


何やら不機嫌そうにしていたけど、なんでかよくわからなかった。
一般クラスとSクラスは校舎も違うため、玄関口で別れる。

大丈夫かな、蒼永。友達作れるといいんだけど。
蒼永の背中を見送り、私も自分の教室へ向かう。


「おはよー」
「ちょっと咲玖!!さっき一緒にいた人誰!?」