目黒は挑発的な笑みを浮かべたが、そんな心配は全くしてない。というより、必要がない。



「誰にも渡すつもりなんかない。奪えるものなら奪ってみれば?」

「っ!」

「だから、とっととフラれて完全に咲玖のこと忘れて。他の男の中に咲玖が残ってるのが嫌だから」



咲玖を想うのは俺だけで十分。
正直言って、一番嫌なのがそこなんだよね。

今でも目黒が咲玖を好きでいること。
咲玖のことが忘れられないこと。

咲玖に嫌がらせすることについては論外だし、理解できないけど、それも愛情の裏返しなのだとしたら。

早く区切りつけて終わらせて。

咲玖を愛して独占していいのは、俺だけなんだから。



「…っ、なんなんだよ」

「じゃあ、そういうことだから」

「お前っ、帰るのかよ!」

「言いたいことは言ったし。あ、咲玖同窓会行くって。
泣かせたらあんたのことぶっ飛ばす」


それだけ言って踵を返す。
コーヒーはほとんど飲まずに冷めてしまった。

とりあえず、牽制はした。
あと俺にできることは、見守るだけ。

何があっても咲玖を守る。
それだけだ。