咲玖はいつもそうだ。
ちゃんと他人と向き合おうとする。
俺ならそんな奴、とことん関わりたくないと思うけど。
咲玖はちゃんとそいつのこと、知ろうとするんだよね。
「中学生の私は、勇気がなかった。
でも今は…蒼永がいてくれるから…ちゃんと目黒くんと話したい」
そう言う咲玖の手は少し震えてる。
怖くて仕方ないのに、頑張ろうとする。
「俺はそうやって向き合おうとする咲玖が好きだけど、あいつのせいで傷つく咲玖は見たくない」
震える手を引いて、ぎゅっと抱きしめる。
「今日も怖かったんでしょ?」
「…こわかった…っ。
でも、でもね…最初は普通に話せてたの。
最初は意地悪じゃなかったの」
声を震わせながら、それでも前に進もうとする咲玖が愛おしい。
「…私が壊したから…っ」
…それは、咲玖が告白を断ったことを言ってるのかな。
それが理由だとしても、酷いことされてきたのに。
それでも向き合いたいって思うんだ――。
「…咲玖、ぶっちゃけあいつとはもう会って欲しくない」
「…そう、だよね…」
「でも、あいつと会ってちゃんと話せたら、咲玖の中で何か変わる?」



