「中学の時のことで、俺に隠してることあるよね?」


咲玖が中学の同級生だとかって男に絡まれた翌日、大志と春日井を呼び出した。

二人ともバレたか、って顔してる。


「…バレるの早くない?」
「昨日、ある男が咲玖に絡んでた」
「目黒が!?あいつがいたの!?」
「目黒っていうの?」
「何なのよ!もしかして、咲玖は同窓会に来ないって言ったから!?」

「落ち着いて、桃。まずは蒼永くんに話そう」


大志は俺に向き直り、申し訳なさそうに謝った。


「ごめんね。ずっとさっちゃんに口止めされてたんだ」
「そうだろうとは思ったけど」
「その人は、目黒くんっていってね…」


中2の時に咲玖に告白したが断られ、その腹いせに嫌がらせをするようになったらしい。
目立つ目黒から目を付けられ、段々と咲玖は孤立するようになった。

中3のクラス替えで離れられたが、最近中学の時の同窓会の話が出た。


「咲玖に目黒がいることを話した上で、同窓会の話は断ったわ。
それなのにあの男…、どれだけ咲玖を傷つけたら気が済むのよ」

「多分だけど、目黒くんは今でもさっちゃんのこと忘れられないんじゃないかなぁ…」

「何言ってるのよ大志!あいつが咲玖に何したと思ってるの!?」


さっきから興奮状態の春日井を優しく宥められるのは、大志しかいない。


「でも、目黒くんってモテるのに卒業するまで彼女は作らなかったんだ。
噂で聞いたけど、今でも忘れられない人がいるって誰とも恋できないみたい」

「それが咲玖だっていうの?あいつはただ、フラれたプライドが未だに許せないだけよ!」

「そうかもしれないけど…僕は目黒くんの中ではまだ終わってないんじゃないかなって思うんだ」



あいつの中では、まだ終わってないか……。



「そうだとしても、咲玖には九竜という許嫁がいるのよ?どのツラ下げてみっともなく横恋慕しようってのよ」
「桃、口が悪いよ…」