「――嫌いじゃねぇよ…」

「え…?」

「お前のこと嫌ったことなんか、一度もない」



目黒くんは、真っ直ぐ私の目を見て言った。
見たことない目をしていた。

なんて言えばいいんだろう、少しだけ苦しそうな…そんな気がした。



「…っ、昨日の奴、彼氏?」

「え?」

「彼氏かって聞いてんだよ!昨日の男!」

「彼氏兼許嫁…」

「は?」

「あ、そこは許嫁でいいのか…」



目黒くん相手だと上手く喋れないな…。



「は?許嫁ってマジなの?」

「マジですけど…」

「高校生で?ありえねー。」

「…目黒くんには、関係ない…」



多分桃ちゃんがこの場にいたら、彼氏って言えばいいのに!って怒られてたところ。
私ってこういうところあるよね。


「許嫁ってあいつと結婚すんの?」

「します…」

「なんでさっきから敬語なんだよ。キモいわ」

「ほっといてください…っ」



私は今度こそその場から逃げ、いや立ち去ろうとした。
もう一刻も早く帰りたい。



「じゃあ、私はこれで…!」

「…んだよ、」

「え?」

「なんだよ、結婚って…」



やっぱり、目黒くんは怖くて苦手。
強引で意地悪で、何考えてるのかわからない。

だから今も、全然わからない。

どうしてそんなに苦しそうな、複雑そうな顔をしているの――…?

私のこと、嫌いなんだよね……?