思わず私は蒼永の頭をなでなでした。


「お兄ちゃんっぽくなっちゃったなぁと思ってたけど、やっぱり弟みたい」
「……弟?」


急に蒼永の表情が歪む。


「あ、ごめん。誕生日は蒼永のが早いよね」
「……そういうことじゃなくて。俺たち許嫁だよ?」
「わかってるよ。でもずっと家族同然に、兄妹みたく育ってきたでしょ」

「………。」


……あれ、蒼永怒ってる?

たまに見せる不機嫌そうな表情。
何か怒らせるようなこと言ったかな?


「俺は咲玖のこと兄妹みたいなんて思ったこと、一度もない…」


急にグイッと引っ張られたかと思ったら――、蒼永の腕の中に閉じ込められた。
突然のハグに頭がついていかない。


「あ、蒼永?」
「咲玖はわかってない…」
「え?」


体を少し離して、私の目を真っ直ぐに見つめる蒼永は…武道をしている時と同じくらい、真剣な目をしていた。
弓道で的を定める時と同じような…射抜かれてしまいそうな強い視線だ。


「俺たちは許嫁なんだよ。わかってる?
将来結婚するってこと」


「……っ、」


「兄妹じゃできないこと、たくさんするんだよ」



〜〜〜〜……っっ!!